私の釣りキャリアは小学校3年生の頃、淡水小物釣りからスタートし、海でのちょい投げ釣り、サビキ釣り、サーフ・堤防からのフルキャスティング、地磯胴突き投げ釣り(今でいうキャスティズム)、穴釣り、ウキフカセ釣りなど、ショアからのエサ釣りを一通りやってきました。しかしここ数年は、極細軽量タックルでパワーのあるメジナやクロダイと対決する面白さに魅了され、完全に地磯上物フカセ釣り師になっています。ルアー釣り及びオフショア釣りはほとんど経験がありません(乗り物酔いがひどく船に乗れません)。
ところで、日本釣用品工業会のデータによれば、2022年の国内の総釣り人口は750万人と推定されているそうです。うち、淡水釣り人口が300万人、海釣り人口は450万人だそうです。この海釣り人口450万人のうち、フカセ釣りをメインで行っている人は少なくて10%、多くて20%程度ではないかと言われています。すなわち、2022年時点で、フカセ釣りの人口は45万人~90万人と推測されています。多いと思いますか? 少ないと思いますか?
地磯フカセ釣りは、他の釣りと比較するとどうしても荷物が多くなりがちで、圧倒的に機動性に欠けることや、仕掛けが複雑で小さなパーツが多く、現場で仕掛けを組むことが面倒なこと、仕掛けの重量調整やコマセと刺し餌の同期など、小難しいテクニックが必要とされると言われていて、初心者にはハードルが高いであろうこと、コマセを使うため汚れ物が多くなるなど、後ろ向きの要因が多いため、もしかするとフカセ釣りの人口は減少傾向かも知れません。
今回は、新たに地磯フカセ釣りにチャレンジしたいと考えている方へ、必要な標準的な装備について説明して行きたいと思います。
地磯フカセ釣りの装備を求める前に知っておくべきこと

これから地磯フカセ釣りを始めようと思う方は、恐らくそれ以前に他の釣りの経験があってのフカセ釣りチャレンジだと思います。釣りデビューが地磯フカセ釣りという人は皆無ではないでしょうか? そのため、ある程度タックルや装備品は既に持っていると思います。基本は既に持っているモノが流用できるでしょう。しかし、地磯フカセ釣り専用品として、新たに購入しておいた方が良いモノもあります。
では、新たに何を揃えるべきなのか、以下を参考にして考えてみましょう。

現場までのアクセスルートを頭に入れておく
地磯フカセ釣りは、陸っぱりからの釣りの中では断トツに危険を伴う釣りであると言えます。足場が悪く、常に転倒の危険があること、場所によってはポイントまでかなりの距離を歩かなくてはならないこと、或いは「道なき道」を征かねばならないケースも考えられます。まず最初に考えるべきことは、「現場までどうやってアクセスできるのか?」ということです。
公共交通機関で移動し、駅やバス停を降りたら磯にすぐに出られるポイント、或いは、車釣行の場合、車を磯に直付けできるポイントなどは恐らく存在しないでしょう。移動手段はどうあれ、磯への入り口から釣り座を設定するポイントまでのアクセスルートがどうなっているかを調べましょう。磯へ降りるルートは整地された道があるのか、未舗装なのか、平坦なのか坂道なのか、数分で歩けるのか10分以上かかるのか?ということを徹底的に調べるべきです。ポイントまでのアクセスの難易度を自分の体力と相談しながら値踏みし、安全に行き帰りができるよう持ち込む荷量を調節したり、足場を支えるフットウエア選定などの安全対策を講じます。この安全装備に関する部分、すなわち、フットウエアやフローティングベストは、地磯フカセ釣り専用として新たに購入した方が良いでしょう。
初めてのポイントなので、可能であれば下見をしておきたいですね。また、慣れないうちは、あちこち釣り歩かず、同じポイントに通い続け、経験値を上げることに重点を置く方が良いでしょう。
最も大事な装備はフットウェア!
地磯フカセ釣りに限ったことではないとは思いますが、特に磯釣りのシーンにおいて、最も大事な安全装備はフットウエア(履物)です。磯には安定した地面は存在しません。ゴツゴツした不安定な岩の上を終日歩くことになります。場所によっては波を被って濡れています。濡れているところには海藻が生えていて、大変滑りやすくなっています。また、見た目ではわからないですが、岩が脆くなっていて、足を乗せた瞬間崩れ落ちることもあります。こういった場所での転倒は即、怪我につながりますので、歩行には細心の注意を必要とします。同時に、しっかりとグリップできるフットウエアの選定と着用が欠かせません。自らの身体を守るフットウエアは、タックル以上に気とお金を遣わなければならないアイテムです。
シューズタイプかブーツタイプか?
フットウエアには大まかに分けて、シューズタイプとブーツタイプがあります。それぞれ長所と短所があります。
シューズタイプのメリット・デメリット

シューズタイプの最大のメリットは「歩きやすく疲れにくい」ことです。後述するソールのタイプが現地の地形に合っていれば、最も安全に釣りができるでしょう。また、足首をしっかり固定できるため疲れにくく、長距離を歩いてアプローチしなければならない磯では非常に重宝します。デメリットとしては、低い磯などで波を被る場所では濡れてしまいます。防水性の高いシューズでも、シューズのカット面より上に水が来てしまえばシューズの中に水が入り込み、ひとたまりもありません。
ブーツタイプのメリット・デメリット

ブーツタイプのメリットは、完全防水のため、常時水を被るような場所でもブーツのカット面までの水位であれば中に水が入ることはありません。そのため、目的のポイントまでの道すがら、シューズでは入れない水深のタイドプールをどうしても渡らなければならないような時でも、じゃぶじゃぶ入ってクリヤーすることができます。また、裏起毛タイプのブーツでは、厳冬期でもつま先が冷えて痛くなることは殆どありません。その代わり完全防水素材のため、夏は蒸れて暑くなります。水は一滴も入って来てないのに中のソックスがびっしょり汗で濡れているということも良くあります。また、ブーツタイプはゴム素材のため、足首がしっかりと固定できないため、どうしても歩きにくく疲れやすいです。長距離を歩くのには不向きです。
ソールのタイプは何が良いか?
釣り用のフットウエアのソールには、大きく分けて5種類あります。それぞれの特徴について簡単に説明します。
ラジアルソール

ラジアルソールは、一般的なゴム長靴のソールパターンのことで、平らな場所であれば濡れている場所でもグリップ性を発揮しますので、船のデッキや防波堤、サーフなどで威力を発揮しますが、ソールの接地面積が少なくなる岩の上や、濡れた場所に生えている藻類の上ではグリップが効かず滑りやすいため、磯では使えません。
フェルトソール

フェルトソールは渓流など浅い河川でウェーディングするような場合に有効なソールで、水の中に沈んでいる石に生えた苔の上でグリップ効果を発揮しますが、磯のようなゴツゴツした岩やフジツボなどの上に乗ってしまうとボロボロになりやすく、また、岩の表面の濡れた藻類の上は非常に滑りやすいため、やはり磯では使えません。
スパイクソール

スパイクソールは、ゴムのソールに金属(ステンレスやタングステンなど)ピンが埋め込まれたもので、磯歩きに非常に向いている、グリップ性が非常に高いソールです。しかし、安価なスパイクブーツはピンを打ち込んでいるゴムソールの強度が低いため、数回の磯釣行でピンが打ち込まれたゴムの周辺がちぎれて、気が付いたらピンが抜けてなくなってしまうことが多いです。そのため、スパイクソールタイプのフットウエアはある程度お金をかける必要があります。また、スパイクソールでコンクリートの上を歩くと高確率でソールがダメージを受け、ピンが抜けやすくなります。
フェルトスパイクソール

フェルトスパイクソールは、フェルトソールに金属ピンが埋め込まれたものがソールに貼られているもので、シューズのソール自体にピンが打ち込まれているものではありません。グリップ力と歩きやすさがバランスよく両立していて、磯釣り用フットウエアのソールとしては一番流通量が多いタイプだと思います。また、フェルトスパイクソールは貼り替えが可能です(メーカーへ送り有償修理扱いのことが多い)。
スパイクフェルトソール

スパイクフェルトソールは、スパイクソールのピンにあたる部分に穴が開いたフェルトソールが貼られたもので、スパイクソールの弱点である、グリップが効きにくい硬くてゴツゴツした岩やの上でもしっかりグリップするタイプのソールです。グリップ力の点でいえば最も優れたソールタイプになりますが、金属ピンはゴムソールに打ち込まれているため、金属ピンの交換はできず、フェルトのみの交換になります。
このように、磯で使用するフットウエアには、タイプ2種×ソール3種類=6種類が考えられます。実際に自分が釣りをするポイントまでの道のりの地形、および釣り座の地形を考慮し、水を被る恐れがない場所であればシューズタイプ+スパイクソールが最も安全でしょう。水を被るほどではないが、濡れた場所を歩く可能性があるならシューズタイプ+フェルトスパイクソール(歩きやすさ重視)かスパイクフェルトソール(グリップ性重視)で決まりです。
釣り座が水を被る可能性がある、またはポイントへ向かう道すがらタイドプールをクリヤーする必要がある場合、または雨天の場合はブーツタイプ+フェルトスパイクソール(歩きやすさ重視)かブーツタイプ+スパイクフェルトソール(グリップ性重視)を選ぶと良いでしょう。
その他の装備品

その他、地磯フカセ釣りに必要不可欠な装備を紹介します。
フローティングベスト

磯釣りに限らず、釣りをする際には必ずライフジャケットの類は着用しなければなりません。しかし、ライフジャケットと一口に言ってもタイプがあります。
磯釣りでは、自動/手動問わず、膨張式のライフジャケットは使えません。膨張式のジャケットは、風船のように瞬時にガスで膨らむ構造のため、切っ先の鋭い岩肌に触れて破れてしまうとガスが抜けて萎んでしまいます。岩場では浮力材入りのフローティングベスト一択です。
国土交通省の型式認証品または、日本小型船舶機構(JCI)の性能鑑定適合品であれば安心です。上の写真はダイワ・ライトフローティングベスト DF-6324というもので、JCI性能鑑定適合品です。
いわゆる「ゲームベスト」と呼ばれる、フロントポケットが非常に大きく、大型のルアーケースが収納できるようなベストはフカセ釣りには不向きです。フカセ釣りはできるだけシルエットが細身に見えるものが便利です。
フカセ釣りは長いハリスを使う軽量仕掛けであるため風の影響を受けやすく、仕掛けの回収の際、ポケットが前方に大きく張り出したゲームベストはハリスが風にあおられた時に針が刺さってしまいやすく使いづらいです。できればフカセ釣り専用のフローティングベストを求めたほうが良いでしょう。
アイウェア

フカセ釣りのシーンにおいて、フットウェアに次ぐ大事な装備で、「これがないと釣りにならない」ほど重要なアイテムが偏光サングラスです。紫外線から目を保護する役目はもちろんですが、水面の雑光(光の反射によるギラギラ)があるとラインやウキ、撒いたコマセの流れが視認できず、全く釣りになりません。
また、偏光サングラスは「安かろう悪かろう」の典型的なアイテムです。極端な言い方をすれば、「安価なものに良いものはない」と言い切ることができるかも知れません。私もかつては安いサングラスを何本も持っていましたが、心の底から素晴らしいと思ったモノはひとつもありませんでした。写真の「TALEX」と出会うまでは。
メガネに取り付けるグリップオンタイプですが、一本2万円します。それでも、安いのを何本も買い漁って来たことがバカバカしくなるほど素晴らしい偏光サングラスです。
レンズカラーは、晴天日中用、曇天用、薄暮用の3つ持てればベストでしょう。ここにはお金をかけたほうが間違いなく良いです。私はお金がないので、写真左「TRUEVIEW FORCUS(夏の強光下用)」と写真右「EASE BLUE(万能タイプ。こちらをメインで使用)」の2本を使っています。
ヘッドウェア(帽子)

帽子もシーズン問わず必須アイテムです。夏の灼熱の陽射し、冬の冷たい北風から頭を護り、雨も弾き落とす重要なアイテムです。夏はメッシュキャップ、冬はニット帽を着用するという方も多いでしょう。ニット帽は一番冷える耳を覆うことができ、冬暖かくて良いのですが、雨の日は使えなかったり、日中は暑くなりがちだったり、イマイチ使い勝手が悪いですね。私は耳を温めるにはイヤーマフを使う方が良いと思います。
写真はダイワ・ゴアテックス タフキャップ DC-1824Wですが、ゴアテックスは防水性、透湿性が高く、オールシーズン使えます。また、長いつばが海面の照り返しを緩和したり、つばの上にサングラスのテンブルを差し込むスリーブがついていて、サングラスをつばの上に乗せているときに頭を下げても落下しない仕組みになっています。また、風でキャップが飛ばされないように、奥襟に固定するクリップ(エリカム(=襟噛む)ストッパー)も内蔵されています。
フィッシンググローブ

フィッシンググローブは、防寒の意味で使うケースがメインと考えがちですが、磯釣りにおいては怪我防止の用途が第一義にあります。運悪く磯で転倒してしまった場合、咄嗟に手を突いてしまいがちですが、磯で手を突いてしまうと多くの場合手をザックリ怪我してしまいます。手袋はシーズン不問で必須アイテムです。
磯フカセ釣りは、餌付けやガン玉の取り扱いなど、非常に細かい作業が多いため、全ての指を完全に覆うグローブは使いにくいでしょう。3本指切りタイプがベストです。5本指切りタイプもありますが、手指のプロテクト性能を考えると3本指切りタイプをオススメします。スリーシーズン用、冬用と、最低2双必要です。予備も含めていくつか持っていれば安心ですね。
「安全」にお金をかけられるクールなフカセ師でありたい!

いかがでしたでしょうか? 今回は安全装備に特化して紹介してきましたが、その他必要なフカセ釣りのアイテムについては別の機会に執筆させていただこうと思います。
ここで紹介したアイテムはすべて、ある意味ロッドやリールなどよりも品質にこだわり、お金をかけるべきアイテムとなります。それほど安全装備は他のすべてのモノより優先されるということを言いたかったわけです。釣り師の性として、ロッドとリールにこだわって大枚をはたき、良いものを手に入れたくなる気持ちはよくわかりますが、釣果の観点で考えれば、それよりも魚と直接コンタクトする針、ハリス、道糸にお金をかけるべきですし、それ以上に、釣りを安全に、末永く楽しむための装備に気とお金遣うべきだと思っています。事故が起きてしまったら元も子もありません。
なんだか説教臭くなってしまいましたが、釈迦に説法と笑い飛ばしていただけますよう、お願い申し上げます!




