
今回の記事は趣向を変えて、リールのハンドルは右がいいのか、左がいいのか? ということにスポットをあててみたいと思います。
スピニングリールは構造上、ハンドルを左右付け替えられます。ベイトリールの場合は付け替えることはできないので、右ハンドルタイプ、左ハンドルタイプを間違えないように購入しなければなりません。
これまで長い間、右利きの人は右ハンドル、左利きの人は左ハンドルでリールを使うものと盲信し、あまり深く考えることもなかった気がします(自分だけでしょうか?)。しかし最近、TVやyoutube動画を見ていると、利き手に関係なく左ハンドルのアングラーが急激に増えてきていると感じます。これまで右ハンドルでリーリングしていた人が左ハンドルに矯正している例もたくさん知っています。釣りのメソッドが多様化し、新しい釣り方が開発されたり、これまでの常識とは180°変わった理論が出てきたりといった事情もあるでしょう。
今回は、リールのハンドルの左右について、あれこれ考えてみたいと思います。
利き手はロッドかリールハンドルか? 基本的な考え方

言うまでもなく、釣りは全身を使うアクティビティです。そして、釣りのジャンルにかかわらず、【キャスト】→【着水】→【ラインメンディング】→【アクション】→【フッキング】→【ファイト】→【ランディング】といった、様々な動きがあります。このうち、キャスト以降の動作については、ロッドとリールを両手で巧みに操り、魚にアプローチしなければなりません。この際に、【ロッドアクションとリール操作のどちらを優先するか?】ということが、【ハンドルは右か左か】という問題の基本的な考え方であると思います。この、【ロッドアクションとリール操作のどちらを優先するか?】という問題は、釣りのジャンルによって変わってきます。
日本の社会は左利きに優しくない
あなたの利き手はどちらですか? ペンを持つ、箸を持つ、ボールを投げる動作をまず考えてみてください。右利きの人は恐らくこれらは全部右で、左利きの人はすべて左でしょう。しかし右利きはともかく、左利きは都合が悪いケースが本当に多く存在します。残念ながら日本の社会は左利きの人に全く優しくありません。駅の自動改札口はICチップリーダーが置かれているのは右側です。ICカードでもスマートフォンでも、スマートウォッチでも、左手でICリーダーをタッチするのは非常に面倒です。
また、右利き用の片刃包丁は刃が持ち手の右側についています。左側(裏面)は【裏スキ】といって、切った食材との摩擦を抑えるためにわずかに窪んでいます。これを左手で持つと食材の包丁離れが悪く、使い勝手がよくありません。左利き用の包丁を購入するか、両刃の包丁を購入する必要があります。食材の皮を剥く行為に至っては、食材を右手に持ち、左手に右用の片刃包丁を持つと、刃が逆についていることになるので単純に切るより大変です。
学校の教室は、黒板に向かって左側に窓があることが決められています。右手でノートに文字を書く際、左側から光が入った方が手元が暗くならないからと言われています。逆に左利きの場合、常に左手が外からの光を遮り、筆記面を暗くしてしまいます。
さらに、左利き用の道具は右利き用の道具と比べて、市場の流通量自体が極端に少ないです。左利きの人の比率は世界平均では約10%と言われていますが、その比率以上に左利き専用の道具は取扱が少ない肌感覚です。そして左利き用の道具はすべからく価格も右利き用のものより高いです。
左利きが有利なケース

左利きが有利になるケースはスポーツの世界では野球のバッティングが知られています。右投げ投手の球は左バッターの方が見やすいということもありますが、それよりも左バッターは走塁で右バッターより有利であるということのメリットが大きいです。
バッターは、打ったら1塁に向かって左回りに走ります。この際、左バッターボックス(ホームベースの右のマス)から走り出して一塁に向かう方が、右バッターボックスから走り出すより1~2歩少ない歩数で1塁へ到達するため、打者走者がセーフになる可能性が高くなります。また、ランナー1塁の時は、左バッターがライト方向へ引っ張るヒットを打つ方が、右バッターがレフト方向へ引っ張るヒットを打った時より2塁を蹴って3塁へ到達できる可能性が高くなります。
そのため、野球の世界では、右利きの人間でも打撃は左打ちに矯正し、「右投げ左打ち」としてプレーする選手がたくさんいます。メジャーリーガーの大谷翔平選手、元メジャーリーガーのイチロー選手、松井秀喜選手、現横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智選手、阪神タイガースの佐藤輝明選手、北海道日本ハムファイターズの清宮幸太郎選手など、強打者と言われる選手は右投げ左打ちの人が大変多いです。これは、ゲームを有利に進められる可能性が高いということを根拠とした選手自身の選択です。
転じて釣りのシーンでも、野球の右投げ左打ちに相当する、右投げ(キャスト)左巻き(リーリング)のアングラーが増えています。これも野球選手と同じ、釣りを効率的に行うことを目指した、アングラー自身の選択といえるでしょう。
釣りジャンル別、利き手とロッド・リールハンドルの関係

前項で、「釣りを効率よく行うことを目指した、アングラー自身の選択」と書きましたが、具体的にはどういうことなのでしょうか?
これは、自分が今やっている釣法で行う一連のアクションについて、「最も大事なアクションは何か?」を考え、その、最も大切と考えるアクションを正確に、素早く、パワフルに行えるよう、そのアクションに利き手を割り当てるということになります。ここでは、釣法別にどう考えればよいか、私の考えを挙げていきたいと思います。
オフショア釣り(エサ釣り)

オフショア釣りは水深が深い場所を釣ることが多く、オフショアキャスティング(ジギング)釣りを除けば、基本バーチカルの釣りです。ここでは巻き上げのパワーと持久力が求められます。電動リールを使う場合はこれらはすべてリールがやってくれますので、アングラーはロッド操作に集中できます。リールのハンドルもロッドの操作も利き手をメインに使えば良く、フッキング後は利き手でハンドルを操作し、反対の手でロッドを支えます。
乗合船の場合は、掛けた魚が前後左右に走り回り、両隣のアングラーの仕掛けに絡んでしまうこともありますので、力づくで魚の動きを制御しなければならないシーンもあるでしょう。もちろん、大型魚狙いの乗合船の場合は、誰かが魚を掛けたら、両隣のアングラーは自分の仕掛けを回収し、ファイト中のアングラーの仕掛けが絡まないようにするのがマナーとなっていますが。
投げ釣り

重いシンカーをつけた仕掛けを堤防やサーフから投げて、置き竿でアタリを待つ投げ釣りのシーンでは、最も重要なアクションは「投げる」ことだと思います。置き竿であればアワセのアクションもシビアなものは要りません。シロギス釣りなど、誘いをかけるアクションが必要な場合もありますが、このロッドアクションはパワーもスピードも要りませんので、利き手ではない方の手で行います。利き手でロッドを持ち、仕掛けが着水したらロッドを反対の手に持ち替え、リールのハンドルも利き手で操作します。もちろん、ロッドの持ち替えが面倒だということであれば、利き手ではない手でリールの操作をしても全く問題はありません。
ライトショアジギング(スピニングタックル)

ルアーフィッシング全盛の昨今、リールアクションのテクニックが最も試されるジャンルがこのライトショアジギングではないかと思います。そして、このライトショアジギングは、キャストの正確さ、ロッドアクションとリーリングを駆使し、ルアーに生命を吹き込まなければなりません。沖にボイルを見つけた時などは時間との闘いで、一瞬のロスも許されません。
この釣りでは、ルアーを着底させてからアクションを開始するフラットフィッシュ(ヒラメ、マゴチなど)狙い以外は、利き手でロッドを持ち、着水したら即座に反対の手でハンドルを操作し、ラインスラックを回収し、即座にリーリングを開始する必要があります。もし、トップ引きで青物を狙うのであれば、キャスト後にロッドの持ち替えをしている人は、リールのハンドルを逆にすることをおすすめします。慣れるまで時間はさほどかかりませんので、是非やってみてください。
バスフィッシング(ベイトタックル)

ベイトタックルを使ってバス釣りをする場合、或いはシーバスを橋脚周りなど近距離のストラクチャー狙いする場合などは何よりも正確なキャストコントロールが求められます。飛距離は大遠投という場面はあまりないものの、近距離を狙う分、正確無比のコントロールが求められます。カバーの真下をピンポイントで狙う、ストラクチャーのキワを寸分違わぬコントロールでルアーを通す、ちょっとでもコントロールミスをすると仕掛けを引っ掛けてしまう、こういう正確なキャストコントロールが求められる釣りはスピニングタックルでは難しいです。
ベイトリールを使う接近戦では、求められるスキルはコントロールとスピードです。ロッドも短いものを使うため、キャストはオーバースローでもアンダースローでも片手で行います。もちろん、利き手でキャストをします。ベイトリールのクラッチを切るのは利き手の親指です。クラッチを切ったらボビンが勝手に回らないよう親指で軽く押さえ、片手で小さくロッドを振り下ろし、ピッ!とキャストします。着水直前に再び親指でボビンを押さえ、強制的にブレーキを掛ければバックラッシュしません。そして着水と同時に反対の手でリールを巻き始めます。バスは活性が高ければすぐに食ってきます。ロッドを持ち替えている時間はありません。
エギング

エギングはロッドアクションが非常に大事になる釣り方です。利き手でロッドを持ちキャストしますが、エギングはエギが着底するまで沈ませてからアクションを開始します。そのため、着底させるまでの間でロッドを反対の手に持ち替えて、利き手でリーリングしても特に問題はありません。もちろん、効率を考えれば、利き手と反対の手でリール操作することができればその方が良いでしょう。
エギング用のリールはダブルハンドルであることが多いため、ハンドル操作はちょっとだけ慣れが必要です。シングルハンドルと比較し、回転半径がやや小さくなるため、ロッドアクションと合わせてフォール(止め)とリフト(縦方向へのアクション)、ダート(横方向へのアクション)といった小刻みで素早いアクションがしやすく、エギをネチネチ動かしながら誘いをかけ、フォールでエギを抱かせます。イカがエギを抱いたらロッドを煽って掛けますが、掛けた後は絶対にラインテンションを緩めてはいけません。テンション抜けは即バラシにつながります。
また、強引なリーリングはイカが身切れを起こす危険性があります。そのため、取り込みまでは一定のスピードで粛々と寄せて来なければなりません。等速で正確に巻き続けるには、ダブルハンドルの重量バランスが大きく貢献します。
フカセ釣り

フカセ釣りも、最近右投げ左ハンドルの使い手が増えているジャンルです。フカセ釣りで最も重要なアクションは、アタリを見極めて、魚が食い込んだ瞬間をとらえフッキングさせる「アワセ」なのですが、フカセ釣りには、アワセと同じくらい重要な工程で、他の釣りにはない特別の仕事があります。
ズバリ「コマセワーク」です。
コマセがないとフカセ釣りは成立しません。仕掛け投入前にコマセを数回打ち、仕掛け投入後もコマセを追い打ちします。コマセを打つためには、シャフトの長さが70~80cmほどあるコマセ柄杓にコマセをすくい、狙った場所に正確に投げ入れなければなりません。エサ盗りが多いときはエサ盗りと本命を分断するために、足元にエサ盗り用のコマセを打つこともあります。仕掛けを投入するたびにコマセを打つため、1回の釣行で少なくとも数百投、多い人は千回近くコマセ柄杓を振るいます。決して無視できない仕事量です。コマセは利き手を使って打つ方が良いでしょう。
さて、フカセ師には右投げ左ハンドルが増えていると書きましたが、こうした方々はコマセは左手で打っている人が多いようです。右手でロッドを持ち、左手でコマセを撒き、仕掛けを右投げし、投入後に左手でコマセを追い打ちします。本来であればコマセ柄杓とロッドは利き手で扱いたいところですが、ロッド裁きを優先させ、コマセ打ちを左投げにしていると言ったところでしょう。
そして、仕掛けをコマセと同調させるように流しながらアタリを待つわけですが、フカセ釣り用の円錐ウキは視認性が悪く、風が強い時や二枚潮がひどいときなどは仕掛けが上手く沈んで行かないことがあります。そういう時はウキを水中に沈めてしまい、仕掛けを馴染ませてやります。こうなるとウキでアタリを視認することはできなくなるため、ラインを指でつまんで直接魚がラインを引っ張る挙動を身体で感じ取ります。ロッドを右手で持っていればラインは左手で持ち、アタリを感じ取ることになります。
クロスドミナンス
少数ではありますが、用途によって利き手が異なる「クロスドミナンス」と言われる人がいます。両利きとは異なり、「交差利き」「分け利き」などと呼ばれます。例えば、ペンは右手でも箸は左手、ハサミは右手でも包丁は左手など、用途によって直感的に(無意識に)使い分けている人のことを言います。割合は左利きと同じ程度、約10%ほどと言われています。
何を隠そう、私がこのクロスドミナンスで、ペンと箸、ボール投げは右手ですが、その他、消しゴムを使う、ドアを開ける、蛇口をひねる、スマートフォンを使う、電卓をたたく、リモコン操作、硬貨を自販機に入れる、モノを拭く、トランプのカードを切る、麻雀のツモなど、ほとんどの動作は左手を使います。利き目も左眼です。カメラのファインダーをのぞき込むときや、手元で細かい作業をするときに片眼を瞑る時は右眼を瞑り、左眼でモノを見ます。
釣りのシーンでは、釣り方にかかわらず、キャストは右投げ、着水後は直ちにロッドを左手に持ち替え、リールのハンドルは常に右手で巻きます。仕掛けを流している間はロッドを右手に持ち替えることはなく、ロッドアクションもフッキングもファイトもすべて左手で行います。当然、ランディングネットを当てるのは右手になります。コマセを打つのも右手です。釣り歴は40年以上になりますが、恐らく物心がついたころから無意識にこうした使い分けをしていたと思います。
結論:効率重視なら両手を駆使し、無駄な動きは極力排除すべし!

いかがでしたでしょうか? リールのハンドル操作は利き手か反対側か? というトピックについて、野球の右投げ左打ち選手に例えて説明しましたが、却って分かりにくくなってしまったでしょうか?野球の世界では、右投げ左打ちというのは非常に合理的な分け利きなのです。これは、野球の走塁が左回りであるという大前提があるため成立する理論です。釣りの場合はその辺の前提条件がありません。しかし、野球が「最短距離でベースランニングする」という目的があるのと同様、釣りの世界においても、無駄な動きを排除し、「手返しよく釣りを行う」という目的を果たすという意味ではよく似ていると思います。
時間が限られているところで釣りを行うトーナメンターなどは、一投でも多くキャストし、効率の最大化を目指さなくてはなりません。そのためには、ロッドの持ち替えは無駄な時間となるので、排除する必要があります。効率を追求するのであれば、利き手でロッドを持ち、キャスト後ロッドを持ち替えることなく、反対の手でリーリングする、「右投げ左打ち」釣法(左利きの方は左投げ(ロッド)右打ち(リール))を強くおすすめいたします。
のんびり釣りを楽しむサンデーフィッシャーは、難しく考えることなく、無駄な時間も含めて釣りの楽しさを味わい尽くすという意味で、自分の本能の赴くがままの設定で釣りを楽しめばよいでしょう。
私はこれからも右投げ→ロッド左持ち替え→右リール、右コマセ、右ランディングネットで行きます!

