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釣りにおける天気の影響について考える。昔の人は偉大だった。観天望気ってなんだ?

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早暁の江ノ島表磯。

アウトドアアクティビティにとって、天気は大変重要なファクタ-です。雨が降ったら屋外での活動は億劫になりがちですよね。また、雨は降っていなくても、気温が高すぎたり低すぎたりすると、屋外での活動は負担がかかりますよね。しかし、例えばスキーは晴れていて気温が低く雪が多いコンディションが良いとされていますし、マラソンやサッカーなど、持久力が要求されるスポーツは、陽射しが強くなく、気温と湿度が低い日がパフォーマンスを発揮しやすいでしょう。

さまざまなアクティビティがありますが、どんなアクティビティにも、「こういうコンディションが理想」という条件が大体決まっています。しかし、釣りはターゲットの魚種ごとに、理想のコンディションは異なります。今回は、釣りにおける天気が及ぼす影響について、掘り下げてみたいと思います。

目次

天気が海中に及ぼす影響

江ノ島表磯。東を望む。沖に見えるのは三浦半島。コンディションが良ければ房総半島も見ることができる。

言うまでもなく、天気は陸上、海中ともにあらゆる影響をもたらします。「天気」と一口に言っても、様々な要因があり、それぞれがすべて陸上、水中に影響を及ぼします。そして、影響を及ぼす要因はすべてが複雑に絡み合った結果として、「コンディション」という目に見える形で我々アングラーに答えを返します。しかしそのコンディションは刻一刻と変わり続け、一分たりとも同じ状況ということはあり得ません。まずは天気が及ぼす影響について列挙して行きます。

日照

燦燦と陽射しが降り注ぐ夏の江ノ島表磯

太陽の表面から発せられる、約6,000℃の熱と光、そして様々な電子線が、太陽系の誕生以来およそ46億年もの間、地球に降り注いでいます。そういう意味では、天気が地球に与える影響の要因のうち、最も大きなものは日照です。太陽光は地表に届くと大気及び海水を温めます。水中にに届いた熱は海水の温度を上げ、生物の活性を上げます。また、海中に到達した光のうち、赤色の波長(640nm~680nm)は及び青色の波長(430nm~450nm)はクロロフィルが光合成を行うにあたり必要な光と言われており、海中の植物が光合成を行うことで、植物性プランクトンや藻類の生育を促し、それらを餌とする動物性プランクトン、甲殻類などが増え、食物連鎖のボトムラインを担う重要なインフラを構成して行きます。

日光が海中に降り注ぐと、外敵から身を隠しづらくなるため、夜行性種など、一部の魚種は活性が下がりますが、日照がなければ植物性プランクトンが発生しにくくなったり、多くの生物の隠れ家や産卵場所となる藻場が形成されにくくなります。海中のすべての生命にとって、日照は必要不可欠なのです。

水温

非接触式(赤外線式)水温計。非常に便利で、すべからく1本持っていたい。

変温動物である魚類は、体温コントロールすることができないため、バイタルの高低は水温に依存しています。すべての魚種にはその種特有の適水温というものがあり、水温で季節を感じ取り、産卵や生活圏の移動などのライフイベントのトリガーを発動させます。

しかし、ここ30~40年間の地球温暖化、黒潮(日本海流)の大蛇行などにより、日本近海の海水温は太平洋岸を中心に上昇しています。1970年代半ばからの約50年間で平均で1℃ほど上がっており、海洋生物を取り巻く環境は大きく変化しています。100年前との比較では約1.3℃ほどの上昇とされており、直近の50年間で急激に海水温が上がったと指摘されています。

そうすると、これまで水温が何度になったら接岸して産卵前の荒食いをはじめるとか、水温が何度以下になったら沖の深場へ移動する準備を始めるとかプログラムされていた魚のライフイベントが、季節がずれて適切な時期に繁殖行動ができなくなったりします。通常は世代を重ねてゆく過程で、環境の変化に順応するよう進化して行くのですが、想定を超えたスピードで海洋環境が変化しています。磯焼けによる産卵場所の激減や、寒海性の魚の生活域が暖海性の魚に奪われてしまうようなことも起きています。

突然の雨で駐車場の車に避難(湘南港附属道路駐車場)

降る量にもよりますが、雨が降ると海中には大きな変化が起こります。空から降ってくる雨は海水温よりも低いため、大量に降ると一気に気温が下がります。大量に降ると、近隣の河川からの流入も増えるため、さらに海水温が下がります。河川水は栄養分を豊富に含んでいるため、増水した河川水が海に入ると濁りが発生します。塩分濃度が変わってしまうほどの雨が降ってしまうと、イカやタコなどの無脊椎動物は浸透圧の影響を受けやすいため、水潮を極端に嫌い、塩分濃度の高い海域に移動してしまいます。

塩分濃度の変化に強い魚種は、高水温時は雨の影響でわずかに水温が下がり、活性が上がります。冬季の低水温時は雨による海水温の変化は比較的小さいかと思いますが、冬季の雨天は海が荒れやすく、危険度が上がりますので、十分に注意する必要があります。

江ノ島表磯 水道口

釣りにおけるコンディションの中で、最もアングラーが受ける影響度合いが大きい要因が風でしょう。フルキャストの投げ釣りから、超軽量仕掛けを扱う磯上物フカセ釣りに至るまで、風が強い時は仕掛けのコントロールが難しくなります。仕掛けが飛ばない、仕掛けが風に押し流される、アタリが目視出来ない、波が高くなる、潮が濁る、浮遊物が流れてくるなどなど、アングラーにとってマイナスの影響が最も出てくるのが風の強い時です。

しかし、風の影響は多くのアングラーには厄介な問題ではありますが、一部のアングラーにとっては、荒れたコンディションの方がチャンスであるということがあります。荒れた海は海底の砂泥が巻き上げられ視界が悪くなり、魚の警戒心が低下します。また、水がかき回されることにより、溶存酸素量が増え、プランクトンが増えたりします。こういう時に活性が上がるターゲットとして、シーバス(スズキ)、クロダイ、メジナなどがいます。

シーバスの中でもヒラスズキは、特に荒れた波が岩にぶつかって砕け、水中が細かい泡で白くなったサラシ場に身を隠し、ベイトを捕食する習性がありますので、荒れている岩礁地帯が最も狙い目となります。メジナも、ヒラスズキほどではありませんが、サラシ場を好んで餌を捕食する習性があります。

風は吹いてくる方向により、アングラーに与える影響が異なります。

横から吹いてくる強風はすべてのアングラーにとって非常に難敵です。仕掛けを投入したいところに入れにくくなり、投入後も仕掛けが左右に大きく流されるため、非常に釣りにくい風となります。風が収まるのを待つか、移動を余儀なくされます。

風がどうにも収まらない場合は、安全も考慮し、風裏を探し、少しでも風の影響が緩和できる場所へ避難しましょう。

江ノ島表磯は北風に強い。釣り場の真北が標高60mの断崖絶壁になり、北風の影響はほとんどない。

上の写真は神奈川県藤沢市の江ノ島表磯なのですが、ここは北風に非常に強い釣り場として知られています。写真は真西を向いていて、右側の断崖絶壁は真北に当たり、左の海側が真南になります。江ノ島の標高(最高点)は60.4mあり、北風の影響はほとんど受けずに釣りができます。逆に春先の強い南風の日は、写真を見てわかるよう、足場と海面の高低差がなく、海水が磯に上がってくるため釣りになりません。風がない日でも満潮時の潮位が130cmを超えると一帯が水を被ります。

観天望気ってなんだ?

洋の内外を問わず、天気と釣りは密接な関係にあると認識されています。現代のように、気象衛星もスーパーコンピューターもAIもスマートフォンも何もなかった古の人々は、空を観て、雲を見て、風を読んで、生物の動きを見て、過去の経験則からこの先天気がどうなるかということを予測してきました。これを「観天望気(かんてんぼうき)」といいます。この観天望気は、オカルト的なものから、現代でも十分通用するものまで様々ありますが、特に釣りのジャンルには観天望気に関連することわざが非常に多く存在します。

ここでは、偉大な古人から伝わる観天望気についていくつか紹介して行きます。

朝焼けは雨、夕焼けは日和

朝焼けは上空の雲が水分をたくさん含んでいて、じきに雨が降り出す合図。

我々が目視できる太陽光は可視光線と呼ばれ、波長の短い順に紫、藍、青、緑、黄、橙、赤の7色光です。波長の短い光は大気中の塵や氷、水の粒などにぶつかると乱反射しやすく、波長の長い光は大気中の浮遊物にぶつかっても反射しにくい性質があります。

日中は太陽が高い位置にあり、太陽光は大気圏を垂直に近い角度で地表に入ってきます。大気圏を通過する距離が短いとも言えます。この時乱反射しやすい紫色の光はほとんどが地表に到達せず、青い光が支配的になるため、空が青く見えます。

朝や夕方は、太陽光が浅い角度で入ってきます。大気圏を長い距離通過するため、地表に到達する過程で波長の長い赤、橙以外はほとんどが反射してしまうため、朝焼け、夕焼けは空が赤く染まるのです。

地球は反時計回りに自転しているため、本来であれば天気は東から西へ動くのではないかと思われますが、日本の天気は西から東へ移動します。これは、上空を流れる偏西風の影響と、赤道付近で暖められ上昇した大気が極付近で冷やされ下降する大気の循環に対し、北半球においては進行方向に対し東へ曲げようとする転向力(コリオリの力)のが働いているためです。

東の空に朝焼けが広がっているときは、日が昇ってくる東の上空に雲がない(=東に高気圧がある)ことを示しており、時間の経過とともに高気圧が遠ざかり、低気圧が近づいてきて天気が悪くなります。それが気圧の谷(高気圧に挟まれた、周囲より気圧が低い場所)である場合は、風が強くなり海が荒れてきます。

西の空が夕焼けになっているときは、西の上空に雲がない(=西に高気圧がある)ことを意味しますので、時間の経過とともに高気圧が近づいてきて、翌日は朝から晴天となることが多いということです。

東風(こち)は魚が食わず

江ノ島釜の口の一級ポイント。

特に東日本の太平洋岸で言われることですが、夏場の東よりの風(或いは北東寄りの風)は、東北地方に深刻な冷害をもたらす「やませ」に代表されるように、親潮(千島海流)で冷やされて低温の風になり、気温とともに海水温も下がり、魚の活性が一時的に下がることを言い表しています。また、東風は沿岸のプランクトンやベイトなどを沖に散らせてしまうことが知られていますので、長く東寄りの風が続くときはショアでは徐々に釣りが難しくなっていきます。逆に西寄りの風はプランクトンやベイトを沿岸に引き寄せる力が働くため、チャンスと言われています。特に厳冬期の西風の日は、底砂が巻き上げられ、カレイが好む反転流やヨレ(複雑に流れる潮がぶつかり合うところ)ができやすく、東日本ではカレイの投げ釣りには絶好のコンディションとして知られています。

凪倒れ

ベタ凪の日は攻めることが難しいのは確かだが、潮は必ず動いている。ノーチャンスということはない。

無風状態で海面が鏡のように平滑で、底が見えんばかりに水が澄んでいるような凪の状態のときは、魚の警戒心が高まり、活性が下がってしまうことを言います。こういう時は、日が当たっている場所と陰っている場所の境目や、沈み根や藻場が見える場所、ストラクチャー周りなど、少しでも変化がある場所を根気良く探りましょう。

例外的に、「メバルは凪を釣れ」と言われます。これは、メバルがあまり泳ぐのが得意でなく、斜め上を向いて水中を漂い、上から落ちてくる餌を捕食する習性から、潮が激しく流れていない時の方が活性が高いと考えられているからです。

風無きに雲行き急なるは大風の兆し

強風が吹く前兆の空模様

地上では風は比較的穏やかでも、上空では雲が速いスピードで流れているような空模様のときは、上空では発達した低気圧があり、低気圧の中心に向かって強い風が吹き込んでいます。特に夏場のこうした空模様は非常に危険です。あっという間に風が強くなり、つむじ風から竜巻並みの突風に発達することもあります。建物や車の中など、一時的に安全な場所に避難するのが賢明です。

台風の前後を狙え

江ノ島表磯とスーパームーン

魚は低気圧の接近など、気圧の変化を敏感に感じ取るとされ、海が荒れる前に荒食いして栄養を蓄えておこうとする行動をとることがあります。台風の真っ只中の大荒れの海では餌を捕食できないことが多く、深場で台風が過ぎ去るのをじっと待っていることが多いので、台風の前後にはチャンスが訪れるということです。特に台風が過ぎ去った後は、海底がかき回され、底砂の中にいるプランクトンが海中に巻き上げられ、水中の酸素濃度も高くなるため、よりチャンスが大きくなります。台風一過の余波にはくれぐれも注意し、大物を狙いましょう。

春の長雨魚が寄る

雨の湘南大堤防。春の長雨シーズンは堤防でフカセ釣りをするアングラーが多い。

春先は多くの魚が産卵期を迎えます。産卵の前後には荒食いをして体力をつけるのですが、産卵行動のトリガーとなるのが水温の変化です。春の雨は一雨ごとに気温が高くなり、水温も上がってきます。このころは天気が不安定で荒れた日が多いのですが、魚たちはこの季節の変わり目を敏感に察知して産卵のために接岸し、積極的に餌を追う行動をとり始めます。いわゆる「乗っ込み」のシーズンです。

春の長雨が収まり、春一番が吹いて、いよいよ春めいてくる頃から梅雨のシーズンにかけて、クロダイを中心にトップシーズンが訪れます。梅雨に入ってからは特に産卵を終えたメジナが失った体力を回復するために荒食いをします。この時期の活性の高いメジナは「梅雨グレ」と呼ばれ、特に人気があります。

天気を知り、臨機応変に立ち回れば百戦危うからず!

真冬の早暁の江ノ島表磯。夏と比較して太陽が昇ってくる位置がかなり北東(写真左)に移動している。

いかがでしたでしょうか? 今回は眉唾物のアナログな記事になってしまったでしょうか? しかし、古人の知恵は現代でもしっかり通用する豆知識ばかりです。ここ数年の異常気象で、最新のテクノロジーをもってしても天気を正確に予測することは不可能なんだそうです。私もスマートフォンの中にはお天気アプリをいくつもインストールしていますが、アプリごとに予測は全然異なりますし、どれもこれも全く確度はアテになりません。そんなITでも解決できない問題が、太古の観天望気である程度予測ができる、そう考えると昔の人々って凄いと思いませんか? 観天望気は生きるために必須の知恵だったんでしょうね。翻って現代人も備えておいて絶対に損はないライフハックだと思います。もちろん、釣り師だけにとどまらず!

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